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grille

時間をかけて火を通し、柔らかく仕上げました。

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好きの代わりに/又長
「本当に若は考えが甘い」
 はじまりはいつもと同じだった。長政のやり方を又兵衛がバカにして、ちょっとした小競り合いになった。
 若もそろそろ学習して必要以上にかみつくなと皆が言うのだが、どうにもわざと自分を怒らせるような言葉を選んでいるように思えてならない。
 しかし、それを他の家臣に話したところで、それは若が短気なだけでしょうと宥められておしまいだ。
 毎度毎度行われる同じようなやり取りを、そろそろどうにかしたいと、思っていたのだ。跡継ぎとして、家臣に舐められていては駄目だという焦りがあった。
(父上のように)
 あの、皆から慕われて誰からも侮られぬ父のようにならねばと思う。しかしその思いが強くなればなるほど、自分と父の間にある差は、はっきりしてくるのだ。
 頭を使ってしゃべることはなかなか難しいから、つい口の動くのにまかせてしまう。又兵衛は上手に上げ足をとって、結局最後には何も言えなくなる。
(くそッ)
 又兵衛がいつものように追い打ちをかけた。ただ、その言葉が的確すぎた。
「殿とは大違いだ」
 その言葉を聞いた瞬間、それまで頭に上りきっていた血がサッと引いていく。何も言い返す気分にならなくて無言でその場に背を向ければ、僅かに若、と呼ぶ声が聞こえたが、だれも追いすがりはしなかった。
(くそ)
 あの場は又兵衛がうまくまとめるだろう。自分よりもうまく。
(なんだこれ)
 気持ちの悪い感覚が腹に渦巻いて、強かった歩調が弱くなる。こんなことでへこたれていてはいけないのに。
(又兵衛のばか)
 背中で、ざわざわと騒ぐ声を聞きながら、いつの間にか止まっていた足を思い切り踏み出した。


「ごちそうさまでした」
 そう言って箸を置く息子を見つめる父の目が、少し心配そうなのにすぐには気が付かない。
 いつもは振り切れるもやもやが、今日はなんだかずっと胸のなかにとどまっている。殿とは大違いだ、という先刻の言葉が頭に張り付いて、離れない。
「長政」
 声をかけられて父の方を見れば、少し眉尻を下げてこちらを見つめているから、またしょうもないことで父に心配をかけるのかと自分のふがいなさにまたため息が出そうだ。
「又兵衛と何かあったか」
 父には隠し事ができないとは思うものの、特に変わったことがあるわけではない。いつもの喧嘩ですよ、と笑って見せたが、苦笑いになってしまったのは自分でもわかった。
 甘えたくなる心を隠して、席を立つ。
 昼間の日差しはもう強いが、夜になればなかなか涼しい。どこかで蛙の泣く声がする。夜風に肌をさらせば心も少し落ち着くような気がしたのだけれど。
「若」
 ふいに呼ばれて振り返れば、そこにいたのは。
「…又兵衛」
 今は素直に話せる自信がなくて、すぐに踵を返そうとしたとき、手首をつかまれる。
「何だ」
 返事をしないで、手首を握りしめたまま長政の部屋へと引っ張られる。離せと喚く空気でもなくて、されるがままついていくしかなかった。

////////////////////

「若」
 仮にも家臣だというのに何のためらいもなく長政の部屋に入って定位置で胡坐をかくから、仕方なくその向かいに腰を下ろした。
「…」
「今日はまた、なぜ途中でいなくなるんですか」
 忌々しげに眉間にしわを寄せて、やれやれといった風にため息をつく彼は、きっと、ずっと気にしているあの時の話をしているのだろう。
 変なことを口走るのが怖いから、黙ってしまう。
「おかげさまで、俺の仕事が増えました」
「…」
「若?」
 聞いてます?と又兵衛がこちらの顔色をうかがおうとするから、顔をそむける。やっぱりこいつの方が優秀で、俺なんか、という嫌な気持ちがむくむくと顔を出す。
「・・・お前の方がうまくやれるなら俺がいなくてもいいじゃないか」
 思わず口に出してすぐに後悔した。こんなの自分でも僻みにしか聞こえない。
「…何ですか、若、拗ねてるんですか」
 絶対にニヤニヤと笑っているだろう声色で、こちらににじり寄ってくる。もうこいつとは口をききたくない、と口を、きゅ、を結ぶ。
「…自分の仕事をほおって、勝手に拗ねて」
 予想以上に近いところで声が聞こえたから、その方を向こうとしたらいきなり視界が闇に包まれた。
「ッ、またべ」
「そんな若には」
声の向こう、頭の後ろでしゅるしゅると布を結ぶ音が聞こえる。
「お仕置きが必要ですね」
目隠しをされたと気が付いたときには、もう体は仰向けに寝かされていた。
「おい!何をする!」
前が見えない状態では抵抗もろくにできず、思わず振り上げた右手は待っていましたとばかりにパシリとつかまれる。いつの間にか左手と一緒に、何かで縛られたのがわかった。
「あまり暴れないで下さいよ」
でないと若の肌に傷がつきますからね、とそんなことを言いながら、手首に巻きつく紐のうえから口づけされたのがわかった。
「ふざけるな!解け!」
「解いたら、お仕置きにならないでしょうが」
 言いながら、又兵衛は長政の体に触れていく。衣服の上から撫でるように這う手の感触は蛇のようで、見えない分体が敏感にそれを感じ取っていく。
「お、い!またべ、や、むぅ…ふ、」
 噛みつくほどの勢いで口を吸われる。歯列をなぞられれば口が勝手に受け入れて、喉奥にたまる唾液で息も苦しい。
「お静かに、それとも口枷もご所望ですか」
 ようやく胸に酸素を吸い込むと、耳元でそんなことを言われて、顔が熱くなる。
 口づけに気を取られて油断している間に、帯は解かれて、熱い手のひらが直接脇腹を撫でるから、あられもない声が出てしまう。
「……ア…ああっ」
 予測できない快感が怖い。
「目隠しはお仕置きのはずなんですがね」
 いつもより気持ちいいんですか?そんなことを言いながら、又兵衛の右手が胸に触れる。一際びくりと震える長政の体には、もうかろうじて腕と足に着物が引っかかるくらいで、そのほとんどがさらされていた。
「若、もうこんなに固くして」
 そういって、胸の突起をピン!とはじかれる。その一瞬で息が詰まってしまうのに、すぐに両手でそれぞれをくりくりと捏ねられるからたまらない。
「ッ、くぅ……ハァっ……ンん!」
 堪えようにも体は素直に快感をとらえる。少し前まではこんなことで快感を得たりしなかったのに。
「もッ…も、やめ…っ…」
 逃げるように体をくねらせる姿が相手を刺激しているのには気が付かない。なんとか快感に抗おうとする態度が目の前の男を喜ばせることを長政は知らない。
「やめろッ」
 無駄だとわかっているけれど抵抗しなければ大切なものをなくしてしまいそうだ。だから又兵衛の右手が一時離されたのが予想外で、長政は油断した。
「…もう、気が済んだか、解けよまたべッッ!ひゃああッ…!?」
 ようやく刺激の止んだ、敏感になった左側の突起が、突如又兵衛の舌に絡めとられたのだ。
「はぁん…ッ!やぁぁ、またべ、やっ」
 右側には相変わらず又兵衛の左手が這い回っている。
「はぁ…ん、やぁッ…ふっ…んうぅ」
 他に音がないから、ぬるぬると又兵衛の舌の動く生々しい音が耳に響く。
「背中まで逸らして、欲しがりだなぁ、若」
 知らないうちに背中が浮いていたらしい。恥ずかしくて戻そうとしてももう遅くて、胸への刺激はそのまま、空いた又兵衛の右手がつつつと背骨をなぞる。
「ひゃ、やめッ…」
 次にどこに触られるのかがさっぱりわからないから、自分の身体をどう動かせばいいかもわからない。
長政の混乱をあざ笑うかのように、又兵衛の指は太ももをするりと撫でながら、膝の裏に手を入れてぐい、と持ち上げた。
「あれ、若、胸だけでこんなにしちゃって」
 ようやく絶え間ない刺激が終わったと思ったら、褌の上から緩くたちあがった自身をペロリと舐められる。見えないせいで予想できない刺激に、次は腰が浮いた。
「でも、今日はお仕置きですからね」
 しかし又兵衛はそれ以上そこに刺激を与えることなく、太ももの内側に吸い付いた。ギリギリまで中心に近づいたり離れたりするから、どうしても触ってほしい場所がはっきりしてしまう。
「ッ、ン…ふァ…」
 緩いけれど絶え間ない快感は絶頂には程遠く、熱ばかりが体中にたまって出口を探す。長政に絡む指はその身体を知り尽くしているみたいに弱いところに触れるから、体に力が入らない。
(又兵衛…)
 今どんな顔で身体に触れるのだろうか。本当に目の前にいるのは又兵衛なのか。下半身に絡みつく体温は熱いのに、ぬくもりが見えない、怖い。
「若」
 でも、自分を呼ぶ声は紛れもなく又兵衛で、それだけで安心してしまう自分が嫌だ。
「どうしてほしいか、そろそろ言ってみてくださいよ」
 また、いつの間にか長政の頭に顔を寄せて耳元でささやく。
「へ?」
 又兵衛が何を言っているのか、意図が読み取れず間抜けな声が出た。
「どうしてほしいか、ほら」
そう言いながら、その手が長政の一物をするりと撫でる。
「ッ!!」
「言わないと、このままですよ」
 目隠ししていてもわかる。きっと意地悪な顔で笑っている。
「ほら」
 いつだってその余裕のある態度に焦っていた。言うことを聞かせるどころか、手のひらで転がされて。
「若?」
 自分ばかりが必要としているような、この関係に焦れていた。
「…触るなッ」
 身体はだらしなく快感の名残に震えたままで、でも、このまま言いなりになることなんてできなかった。
「又兵衛の、ばか!!」
「…若?」
「どうしてほしいかって?」
 布で隠された瞳の奥から、又兵衛を睨み付ける。
「さっさとこの目隠しと腕を解け!」
 沈黙のあと、長政の耳に届いたのはため息、解いてくれるのか、と期待した直後、又兵衛の指が長政の双丘を割って秘孔に触れる。
「…なにッ…アッ…んんぅ…!」
 どうやら指に何か油のようなものを塗ってあるらしい。ぬるぬると滑って割れ目を責める。
「自分の置かれている状況ぐらい察してくださいよ」
 じらすように滑っていた指が、入り口を見つけたかのよう一点に食い込む。
「ッあああ……やああ、アッ……やめぇ…」
 そんな長政の静止など聞くわけもなく、ズプリと又兵衛の指が長政の中に侵入する。痛みはないが、圧迫感に息が詰まる。
「まだ、先しか入っていません、よッ」
 そう言いながら、ぐいぐいと指を押し込んだかと思うと、何かを探すようにうごめく。自分の体内で暴れる他人の指に、違和感以外の何かをとらえ始めるのが怖くて、長政は歯を食いしばるのだが。
「無駄なことはしない方がいいですよ、アレがどこかは分かってますから」
 そういうと又兵衛は、ぐ、とある一か所を押す。その瞬間頭が真っ白になるような快感が長政の背筋を走る。
「っやぁぁぁぁん!!……っは!…アッ」
 今までとは段違いな刺激。しかし、後ろの刺激で達せるほど、都合のいい身体ではなくて、すぎる快感はもはや苦しみでしかない。
 それなのに又兵衛は、指を増やしながら何度もそこをつついてくる。
「慣れたものですね、もうこんなに飲みこんでいるのに、まだ足りないですか」
 ぐちぐち、と又兵衛の指にかき交ぜられる。火花が散るような快感なのに、絶頂には決して届かない。
「またべッ…アッア、やっ…またべ、も、だめ」
「何が駄目なんですか」
「……ッ」
 分かっているくせに、やっぱり意地悪だ。本当はこんなの嫌なのに、どうせするなら顔が見たいのに。しがみつきたいのに。
 何も許してもらえなくて、おもちゃのように扱われて、それでも自分から強請らないことで、なんとか心を保っていたのに。
 ここで強請ったら相手の思うままだ。それだけは嫌だと意地を張って歯を食いしばれば、かき回す手の動きが激しくなった。かと思ったら、急にずちゅ、と勢いよく抜かれる。
「…ふぁ!?」
「わかりますか、自分のここがどうなっているか」
 またつつくように長政の秘孔につぷつぷと触れる。違うのは、そこが先ほどまでとは違ってひくひくと蠢いていることだ。
「指じゃ、物足りないんでしょ」
 何を言わせたいのかくらいは流石にわかる。でも、それを言うわけにはいかない。
「何が欲しいか教えてください」
 言えますよね、若。
 耳に唇をくっつけてしゃべるからくすぐったい。快感が増えてまた顔に血が集まってくる。
「…ほら、」
 指で一点をねちねちとつつきながら、おねだりの言葉を促す。ギリギリまで昂ぶった体にはもう熱が充満している。それでも自分から求めるわけにはいかない。
「…う」
 こんな、相手の顔も見れずに、腕をからめることもできずに、最後まで抱かれるわけにはいかないのだ。
「う、るさ、い!こ、の」
 又兵衛の余裕を崩すのが何かを探しても、そんなものは見つからない。頭を使うのは苦手だと、思いつくままに長政は叫んだ
「この!短小!!そんなお粗末なものいらねぇよッ!」
 思い切り叫んでしまうと、もう後は口が勝手に動いた。
「なんでこんな、こと、すんだよ、なんでこんな、意地悪、して」
 欲しいのは快感じゃないのに。
「なんでお前は、俺の言うこと聞いてくんないの」
 言いながら少し涙がにじむけれど、目隠しが吸い取ってくれる。自分の言葉は又兵衛を怒らせただろうか。いっそ怒ってどこかに行ってほしいと、そんなことを考えている長政に、また、ため息がふうっと降ってきた。
「まったく、若には敵いませんね」
 予想とは違う又兵衛の反応に内心キョトンとしていると、するすると音がして、手首の拘束がなくなる。
「そんなに言うなら仕方ない」
 次いで、目隠しも解かれる。急に自分の希望が通って、あっけにとられる。声色は少し不服そうだけど、怒っていないのだろうか。
「どうしてほしいか命令してくださいよ」
 言うこと聞いてあげますよ。その言葉が少し嬉しくて、警戒心が綻ぶ。ようやく長政の瞳に収まった又兵衛は、長政が思っていたよりも髪を乱して、少し辛そうな顔をしていた。服も乱れている。
「ほら、若、早く」
 せがむような声、又兵衛も我慢していたのだろうか。その眼はギラギラしていて獲物を目の前に手が出せない獣の様にも見えた。長政は、ようやく自由になった両腕を伸ばすと、首に絡ませてぎゅ、と抱き付いた。
「意地悪するな」
 精いっぱいの長政の命令に吐息で答えて、わずかに浮いた長政の背中に片手を添えた又兵衛は、そのまま体を起こして長政を膝に乗せる。
「意地悪はしませんけど、若」
 いきなり抱き起されてぎゅうと目の前の身体にしがみついた長政は間抜けな声で返事をする。
「ん?」
「人を短小呼ばわりしたことは、後悔させてあげますから」
やっぱり怒っていた、と思う前に、思考は他に奪われてしまった。
「へ、っひッ……やぁぁ!」
 又兵衛は両手で長政の尻たぶをぐい、と広げると、その奥の秘孔に自身をあてがう。
「や、…まて、……ん、またべ、や、ぁ!むりっ…」
「大丈夫ですよ、俺のは短小なんでしょう」
 そ言うか言わないか、腰を又兵衛の大きな手に掴まれて、体がぐぷぐぷと膝の中に沈んでいく。
「ッ…んやぁぁぁ!……だめッ、またべぇぇ……ひゃん!」
 又兵衛自身も腰をつかって下から突き上げるから、急に埋め込まれて悲鳴を上げる。先ほどまでの熱は体の中でくすぶったままで、火が付くのは一瞬だった。
「やぁッ…、ふかいッ……だめ、だめ、あぁ……」
 胡坐の上に座っているから重力もその結合を深くする。又兵衛が腰をゆらすたび、快感の種が擦られて辛い。
「俺の短小でも随分満足してくれているみたいですね」
 そう言いながら、目の前にある長政の胸に唇でじゃれる。
「やぁッ…ふ、アぁ…ッンッ」
「若のケツの穴が小さいってことですか」
 聞き捨てならないことを言われているのは分かるのだが、言い返す余裕は長政にはない。後ろと胸だけではなくて、前も又兵衛の腹筋に擦られているのだ。次第に又兵衛の腰使いが荒くなるのに合わせて、さっきまで遠かった絶頂はもう目前に迫っていた。
「ん、いじわる、言わないっていった、ぁ!」
 ただ、自分を馬鹿にする言葉が悔しくて必死にそういえば、うるさいとでも言うように唇を奪われる。深い口づけのせいで又兵衛の動きがとまるからもどかしくて、無意識に自分から腰を揺らしてしまう。
「若、知らないんですか」
 言いながらまた、又兵衛がぐいぐいと責める。長政の限界を感じてその左手は長政の前を包んで、律動に合わせて擦る。
「あっ!…っア!またべ、もう、もうッ…」
 待ちわびた直接の刺激に脳裏で火花が散る。思わず又兵衛の頭を抱き込んでしがみつくその耳元を、ささやきがくすぐる。
「男っていうのはね」
「…ひゃ、ん、ん?」
「好きな子ほど、いじめたくなるんですよ」
「ッ、へ…?ッア、ン、あぁ、あ、」
 快感が占領する頭の中で、懸命に考える。
「ま、又兵衛は、俺のこと、好き、なの?」
 冷静な自分で絶対に言わないセリフがするりと口から出て恥ずかしくなる。皮膚の一枚下で鳥肌が立つような感覚がある。
「そうでなかったら、く、こんなことしませんよ」
左手の動きを早め、律動を激しくして、長政を追い詰めながらするその返事は肯定、でも遠回しな言葉じゃまだ足りない。
「んッ、…ちゃんと、言っ…てぇッ」
 言葉が欲しくて、絶頂をこらえる。爆発しそうな快感を、歯を食いしばって押しとどめる。ちゃんとした言葉が欲しい。長政は又兵衛の言葉を待つ。
「…好きですよ」
 二人にしか聞こえないくらいの小さな声でも、その言葉は長政の頭にじんじんと響く。
「好きだ、長政」
 まるで息を吐くようなささやきが長政の耳に流れ込むその瞬間、頭が真っ白になる。熱のすべてが一部にあつまって、又兵衛の手の中ではじけた。
「っは、あぁっ……俺も」
 達したばかりの敏感な体の中に又兵衛の熱を感じながら、荒い息の中に言葉を乗せる。この気持ちを伝えたくてたまらない。普段の自分ならなかなか言えない言葉なのに、今は我慢もできない。
「すき、またべえ」
 又兵衛は返事の代わりに、両腕で思い切り長政を抱きしめる。内側に熱の爆ぜるのを感じながら、もういちど、すき、とつぶやいた。
 
////////////////////


「悪かったな、今日は」
 情事の後始末をようやく終わらせて、整えた寝床にもぐりこみながら長政がぼそりとつぶやいた。
「…何が?」
「…わからないなら、いい」
 自分でお仕置きとか言っておいて、どうやら忘れているらしい。自分ばかり気にしていたのかと恥ずかしくなって、ごそごそと寝返りして又兵衛に背を向ける。
 「珍しいですね、若が謝るなんて」
 腕が後ろから伸びてきて、先ほどとは違う種類のぬくもりが長政を包み込む。この腕の中では安心してしまって、すぐに眠たくなりそうだ。
「でも、又兵衛が意地悪なのがいけない」
 これからは俺の言うことも聞けよ、と言えば、どうでしょうね、という返事が返ってくるので、むっとして、また寝返りして向かい合えば、思いのほか顔が近い。恥ずかしくなってそのまま鎖骨のあたりに頭をもぐりこませれば、さっきまでもっと恥ずかしいことしてたでしょうがと呆れた声がきこえてくるから、うるさいと胸を叩いた。
「若、俺の言ったこと覚えてます?」
「俺が謝るのが珍しいって?」
 ちがうちがう、と又兵衛が笑う。頭を撫でてくれる手が気持ちいい。
「男は、好きな子ほど意地悪したくなるんです」
 そう言いながら顔を覗き込んで、額に口づけした。思わず赤面した長政は照れ隠しに必死だ。
「じゃぁ!俺もお前に意地悪するからな!」
 自分の言葉が遠回しな告白になっているのに気が付いているのかいないのか、下から睨み付けながらそんなことを言う若い主がたまらなくて、又兵衛はその体を胸の中にぽすりと抱き込む。
「いいですよ」
「いいのかよ」
「えぇ」
 髪をすくように頭を撫でればへんなまたべぇ、という声はもうむにゃむにゃと眠たげだ。先ほど随分無理をさせたしすぐに無防備な寝息が聞こえてくるだろう。
 予想通り、すうすう、というささやかな呼吸が聞こえてくるころ、又兵衛はつむじに口づけしてやさしくささやいた。
「沢山意地悪してくださいよ」
 好きと言う、代わりに。

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